親が認知症になった時のために、知っておきたいこと・考えておきたいこと
- 麻希 大井
- 2020年7月29日
- 読了時間: 8分
更新日:2月13日

親や祖父母の介護を考えたときに、もっとも不安に思うのが認知症のことかもしれません。
認知症は、歳をとれば誰にでもおこりうる病気です。 2012年の統計では65歳以上の高齢者の7人に1人が認知症でしたが、2025年には高齢者の5人に1人になると見られています(*1)。
また、認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)も足すと、すでに4人に1人は、認知症かMCI。
いつ誰がなってもおかしくない身近な病気だからこそ、正しい情報を知っておくことが大切です。
*1 内閣府「平成30年版高齢社会白書」より
<目次>
認知症の症状は、物忘れ以外にもさまざま
認知症とは、いったん獲得された正常な知的機能が、脳の病変によって障害され、その結果、自立した生活が困難になった状態のことを言います。
幼少期から脳の発達障害があるような場合は認知症とは言いません。
認知症のよくある症状は、「物忘れがひどくなった」ということ。しかし、人間は年齢を経れば、だれでも記憶力は衰えてきます。
「この間会ったあの人の名前を忘れた」「あのパン屋さんの名物パンの値段を忘れた」というようなことはよく起こります。
こういう生活に支障のない物忘れは、だれでも加齢によって大なり小なりあるもので、これも認知症の症状のひとつというわけではありません。
では、どういう症状が認知症なのでしょうか。
たとえば、「夕食の主菜は何かを忘れた」のではなく、夕食を食べたという体験自体を忘れてしまうような忘れ方が、認知症の典型的な症状です。
国際的な精神障害の診断基準であるDSM-IVによると、認知症と診断する際には次のAからGまでの7項目が満たされていることが条件になります。
<認知症であることの必要条件>
A | 記憶障害があること |
B | 以下の四つの認知機能障害のうち少なくとも一つがあること (1)失語(何か言おうと思ってもどうしても言葉が頭に浮かばず出てこない、人の言うことが外国語のように聞こえて理解できない等) (2)失行(運動機能は正常なのに一定の行為がうまくできない、例えば、服をちゃんと着ることができない、ドアのかぎをあけることができない等) (3)失認(視力も手の感覚も正常なのに対象を正確に認知できない、例えば、どれが親指であるかわからない、左右がわからない等) (4)実行機能障害(計画する能力、まとめる能力、論理化する能力、抽象化する能力等)の障害のうち一つ以上 |
C | 前述のAおよびBが、社会的能力(家庭内での能力も含める)、または職業的能力を著しく障害し、過去の能力水準を明らかに低下させていること |
D | 上に述べたような認知機能の低下が徐々に起こってきて続いていること |
E | その障害はせん妄(意識障害)の時だけ現れるものではないこと |
F | 前述A、Bの認知機能低下は、全身の病気や薬物中毒・アルコール中毒などによるものではないこと |
G | 認知機能障害は大うつ病や統合失調性ではうまく説明できないこと |
進行を遅らせる薬はあるが、正常な状態に戻るのは難しい
A~Gは、最低限これらが満足されないと認知症とは呼ばないという、認知症の必要条件です。これらを「中核症状」と呼びます。
その他、「周辺症状」として徘徊(はいかい)、妄想、不潔行為、暴言などがみられる場合もあり、身体症状として尿失禁(おしっこをもらすなど)、歩行障害などが認められる場合もあります。
認知症の原因になる疾患として最も多いのは、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)で、次いで多いのが脳血管障害(脳血管性認知症)です。
そのほか、手足のこわばりが特徴的なレビー小体型認知症、社会のルールに沿って行動することが難しく、性的な興味が強くなったり、スーパーで会計前のものを食べてしまうなどの症状が見られやすい前頭側頭型認知症などがあります。
ただ、人によって、また環境によっても、さまざまな症状が出るため、精密検査を受け、専門医によって原因を特定する必要があります。
認知症になると、多くの場合は治療しても正常な状態には戻りません。
*原因が慢性硬膜下血腫〈頭部を強打した後に脳の表面に徐々に血がたまる病気〉や正常圧水頭症〈脳脊髄液を収容する脳室という部分が少しずつ拡大する、原因不明の病気〉の場合は、脳外科手術によって脳の働きが復活する可能性があります。
認知症になったらなかなか治りにくい。どんな症状がでるのかもはっきりわからない。
そのため、親が認知症になったと聞くと、まずショックを受け恐怖を感じる方が多く、その気持ちは自然なことと言えます。
アルツハイマー型認知症の場合は薬によって進行をある程度遅らせることができると言われていて、薬剤の投与を中心とした治療を行いますが、進行してしまうとなかなか薬による治療は難しいと言われています。
その他、徘徊、幻覚・妄想、興奮などの症状に対しては種々の向精神薬を用いた対症療法をします。

薬の飲みすぎや怪しげな情報には注意
しかし、最近は、認知症に対する薬を多用することが問題視されています。
何種類もの認知症治療薬や向精神薬を飲むことで、いつも眠くてウトウトしているような状態になってしまい、ますます脳の働きに支障がでるような場合も見られます。
薬の種類や量を加減しながら、その人らしい暮らしができるよう、環境を整えることが大事です。
まだまだ、未知の領域が多い認知症。治療方法も確立されていないため、早期に発見し、認知症を遅らせる薬の投与を含め、早めに対処することが重要というのが、医師の見解です。が、これもまた、早期に発見したからといって、必ず進行するというわけでもありません。
その人によって、ゆっくりとした進行で天寿を全うすることもあります。
マスコミでは「認知症予防のために●●の食品を食べるとよい」「●●の計算を毎日すると認知症になりにくい」などというさまざまな情報が飛び交います。
治療が難しく、生活もしにくくなってしまうことが不安で、こうした情報に惑わされがちですが、90歳を過ぎれば2人に1人は認知症、と言うデータもあるほどポピュラーな病気でもあります。
情報にふりまわされすぎず、あまり怖がらず、この病気を受け止めたいものです。
家族だけで頑張らず、介護のプロの力も借りる
認知症の方に対して「頭がおかしくなってしまった、もう前のようには付き合えない」「変な行動ばかりするからつい怒鳴ってしまう」などという対処はぜひ慎みましょう。
認知症になったからといって、その人らしさがまったく失われるわけではありません。
それに、急に外に出て帰り道がわからなくなることを「徘徊」と呼んだりしますが、外に出ようと思うきっかけは必ずあります。
たとえば、醤油が切れたからスーパーに買いに行こう、と玄関を出るのですが、出たとたんに、なぜ外に出たのかを忘れてしまい、スーパーとは違う方向に歩き出してしまうなど。
行動の辻褄はあいませんが、その人なりの行動の理由はあるのです。
また、他人からみたらおかしな行動をしていて、迷惑に感じるかもしれませんが、何より不安で哀しい思いをしているのは本人です。
若い頃の自分とは違ってしまったことをどう受け止めていいかわからず、不安で興奮したり、うつになったりする方も少なくありません。
でかけて帰らない認知症の父親や母親を探し回り、見つけた途端、「何やってるの!」などと責めるのではなく、「寒かったね、家に帰りましょう」と普段通りに声をかけられるといいでしょう。
平常心で対処するのは大変ですが、できるだけ心掛けたいですね。
認知症の方を家族だけで介護するのは、お互いにとても苦しく、疲労します。要介護認定を受け、介護保険サービスを利用して、デイサービスに通ったり、ヘルパーさんに身の回りのことをフォローしてもらい、本人と家族が少し距離を置いたほうが、うまくいく場合が多いでしょう。
認知症対応型の入居施設(グループホーム)で暮らし、プロの介護職の介護を受けながら生活をしている方もたくさんいます。
認知症の家族を持つ悩みは、同じ悩みを抱えた人たちと情報交換をすることで、軽減されることも多くあります。
全国に認知症の本人やその家族などが集える「認知症カフェ」があります。こうしたところに出向き、介護のヒントを得ることもおすすめします。
母親・父親の介護予防にプレゼントやメッセージを
親が長く元気に暮らせて健康寿命が延びると、家族が介護をする期間も減ります。
そのためには、楽しみや張り合いのある生活が重要です。
親にとって、子供や孫とのコミュニケーションは大きな楽しみ。
単調になりがちな日々の刺激にもなります。
誕生日や、母の日・父の日にプレゼントを贈ったり、日頃の感謝をまめに言葉にして伝えることは、介護予防の観点からもおすすめです。
Oyaimaでは、年配の方向けのプレゼントの選び方やおすすめ商品をご紹介しています。
親や祖父母を気遣うあなたのその気持ちを、ぜひ、ギフトという形で届けてみませんか。